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【 VOL.22】 あんまりな。  
     
 
 

人生すごろく。
 
あんまりな。

新緑の、特に雨の多い時期の葉からは気分をリラックスさせる成分がたくさん出ているそうだ。
そのせいか、この季節、木漏れ日の下に目を閉じて寝転がっていると、どこか別のところに連れてゆかれそうな、ふわりと浮かんでしまうような、かるくトリップ気分の眠気がおとずれる。

ゆるゆるとした葉の揺らぎ、それをすり抜けてくる光の揺らぎ。
たとえ目を閉じていても、その揺らぎは頭の芯まで届いてくる。
葉を1枚、2枚、3枚とかさね通ってきた光のグラデーション。
音を閉じ込めてしまった世界から届くような、くぐもった葉のこすれる音や鳥のさえずり。 そして、土と緑の命の臭い。
 柔らかで微かな酔いがそこにある。


梅雨時には、我が家の1階の朝日が差し込む窓辺には、日差しを和らげる優しい木陰が出来上がっている。
向かい合って並んだ葉の一組が、さらに向かい合って向かい合って、たらんと水平に垂れて、ゆるりゆるり揺れる姿はとても美しい。
雨の日には、空から落ちて来る水滴をその葉で受け止め、集め、流し、音とリズムを変えてツツッゥーポターッと地面へと落としてゆく。
晴れの日には、少しでも多くの光を全身に浴びようと、水平に広がる葉の一枚一枚が、我も我もとダンスするのだ。

この、私好みの木陰を作る木の名前は「タラ」である。
あの山菜の王様の「タラの芽」の育った姿だ。
少しえんじ色がかり、縮こまった姿の食べ頃のタラの芽は、この頃になると毎日すくすくと伸び、大きく育った自身の重みで水平にたらんと広がっては又、その上に新たな芽を伸ばすという事を繰り返す。

向かい合わせで並ぶ、この葉のつき方はウルシやハゼの仲間とよく似ているが、決して間違える心配は無い。
タラの木の幹には堅くて細かいトゲが、びっしりと生えているからだ。
新芽の頃でも、うっかりすると痛いトゲだ。
年を越した木の幹に生えたトゲの堅いこと、多いこと、痛いこと。
一度うっかり、この木に頭をぶつけた時には、あまりの痛さにしばらく声も出なかった。

 それ程なのに、それなのに。 あんまりだけど、それゆえに。
 この「タラの木」。 別名を『嫁たたき』と言う。  

2011.7.30
追分 めぐみ
 
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