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【 VOL.27】 ヤマトナデシコ  
     
 
 

暖かな女
 
ヤマトナデシコ

女子サッカーが世界一になった事を記念し、河口湖周辺がパワースポットだという佐々木監督にあやかり町が湖北岸にナデシコの花壇をつくった。
「やっぱりなぁ。」 
その花壇のナデシコは『西洋ナデシコ』だった。

『大和撫子』という日本女性を表した言葉から女子サッカーチームの愛称を『ナデシコJAPAN』としたのであろうが、日本原産のカワラナデシコ(別名ヤマトナデシコ)という花は竹久夢二の絵の中の女性のように、か細く、頼りなげで思わず手をさしのべて守ってやりたくなるような可憐な花だ。

日当たりのいいススキや雑草の繁る荒れ地にピンク色がわずかに小さく見えた気がして草を踏みつけ近づいて行った。
それがたった一輪のナデシコだとわかった瞬間、この場所でのこの愛らしい存在との出会いに、思わず「あっ。」と声が出た。
群生する事をせず、むしろ周りのネコジャラシやカヤツリ草に支えられるようにして細い茎をひょろりと伸ばして、小さく、しかし周囲に決して染まらないピンクの花を一輪か二輪つけ、ひそやかに自己主張している。
栄養に虫退治にと、人の手をさんざん使って、誰もを振り向かせる見事な花をつける薔薇や蘭と違って、ほったらかしの荒れ地に、しかし純潔を失う事なくポツリと咲くナデシコには「けなげ」という言葉がぴったりだ。

こういうイメージをもって日本女性を『大和撫子』と表現したのなら、そこには随分と男の身勝手な願望さえ感じてしまう。
しかし、実際にこの花の美しさを日本男性が荒れ地から見つけ出すかとができるのだろうか。
湖岸の西洋ナデシコの花壇を見ながら「男にわかるのはせいぜいこっちだろう。」と、思わず毒づいてしまった。

いや、美しいのだ、西洋ナデシコも。
花の一つ一つの形はカワラナデシコとよく似ているが、一つの茎にいっぱい花をつけ、濃い赤からピンク、白まで色のバリエーションもいっぱいだ。
太くまっすぐ立ち上がりナヨナヨしたイメージはかけらも無い。
明るく、健康的で実に可愛い。
そう、ナデシコJAPANの彼女達には西洋ナデシコの方がずっと似合ってる。

それに日本原産のカワラナデシコは庭や鉢に植えると、そのヒョロヒョロと頼りない茎がしっかりと自立できず、実にお行儀が悪い。
場所さえ合えば種でも増えるし宿根草だから次の年も芽は出てくるのだが、うまく囲っていても本体はだんだん弱ってくるし、あちこち飛び散って新しく花を咲かせても荒れ地を好む性格で、逆に手入れされた庭ではいつの間にか消えてしまう。

ヤマトナデシコ。
他の花と一緒に咲いたり、まとまって咲く事や人に守られる事も干渉される事も苦手で、その姿からは想像できない、しかしある意味日本を代表するのにふさわしい「フーテンの寅さん」のような性格の花なのだ。

2011.10.15
追分 めぐみ
 
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