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【 VOL.36】 妖精か妖怪か。  
     
 
 

 
妖精か妖怪か。

夕方6時頃、冬にはめずらしい雷がおどろおどろしく長々と響いた。
9時頃、ドンと打ち付けるような瞬間の地震があった。
そして10時、今度は短く随分とくぐもって再び雷が響いた。

2階のカーテンを少し開けて外を見てみると、2日前に降った水気の多い雪がすでに融けていたアスファルトの道が再び白く曖昧になっている。
外の景色が薄ぼんやりと霞んで見えるのは霧ではなく細かい雪がギッシリと連なって降っているせいだった。
街灯に照らされたところだけ白くラメのようにテラテラ光っている様子は夏の夜、そこに集まる小さな虫達のようだ。
この暗がりを白濁させるほど、しかも無音で降りしきる細かい雪は夜空をはさんだ異界から降下してくる生き物のようで気味が悪い。

テレビの音を消してみても外にはなんの音もない。
ストーブの上の薬缶の沸く音ばかりがやけにハッキリと耳に入ってくる。
雪に食べられてしまった音はどこに行ってしまうのだろう。


翌朝はどこかから切りとって貼りつけたような青空だった。
本当に久しぶりに富士山はてっぺんから裾野まで、それに続く遠くの家々から我が家の庭まで、たっぷりすっぽり雪で繋がっている。

朝刊を取りに外に出た。
郵便受けの雪はふたを開ける時にサラサラと「サラサラ」という音が聞こえてくるかのようにサラサラとこぼれ落ちた。
足元の雪はスパンコールをまぶしたみたいに絶えず光を反射し、おがくずよりももっと軽くもっとふわふわだった。
長靴で思いっきり蹴っ飛ばしてみても手応えがなく、わずかに引っかかった雪だけが空中に放り出されキラキラ輝きながら落ちてきた。
試しに竹箒を持ち出して掃いてみると10cm以上も積もった雪が帚で掃き散らす事ができてしまった。
これはもうアニメの世界で私は今、アニメ映画の妖精となってアスファルトの道に積もった雪を軽々と掃き散らかしているのだ。

日本海側は大雪で深刻な被害が出ている。
久々に雪が降ったここでも、通勤に支障が出たりして困り顔の大人が多い。

雪を楽しむ心が申し訳ない。
しかし我慢しても笑いが口元からこぼれ、雪道で一人帚を振り回すオバサンの姿は人が見れば妖精ではなく妖怪に見えていた、気がする


2012.2.29
追分 めぐみ
 
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