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【 VOL.37】 富士に「ジョーズ」  
     
 
 

鬼がくる
 
富士に「ジョーズ」

  1月28日(土)朝。 富士河口湖町震源の地震。
  午前7:39 震度4 7:43 震度5弱 7:46 震度3 8:04 震度3

朝7時半。目覚めた後もぬくぬくしたまどろみがあまりに心地よく、とりあえず起きなければならない用もないし、いつまでもいつまでも布団に甘ったれて包まれていたかった。

それはいきなり来た。
この家の真上から大きなカナヅチで力いっぱい「ガッツン」と叩かれたような一瞬の衝撃だった。
あわてて、それでも靴下をはいて綿入れも羽織って飛び起きてはみたが、どの部屋にも倒れたものもなく揺れも一瞬でそれっきりだった。
それでも夢にしてしまうには大きすぎる。 胸もドキドキしている。
まずは服を着替えようと思ったその時、もっと大きな「ガッツン」が来た。
棚にあった化粧瓶が床に転げ落ち、ひび割れて中の液体がじわりとしみ出してきた。 それだけでパニック度はぐーんと上がり頭が少し痺れ始める。
まだ続くのか? 続くとしたら、どうすればいいんだ?
固まって動けないまま足元の液体が広がってゆくのをただ見ていた。

安否を心配する電話があった。
それに答えている最中に、3度目の「ガッツン」がきた。
「落ち着いて!」の声の聞こえてくる電話をブチンと切ってしまう。

これはもしや、噴火かもしれない。 ベランダに出て富士山をさがした。
晴れた晴れた青空に普段と変わらなすぎる富士山が堂々とそこにあった。
煙どころか雲一つない。 どこかに変化を見つけようと廻りこむ事もできないのにその斜面を右、左と背伸びして眺めていると冷気が爪先からゾワッと這い上がってきた。
このところ、最低気温が-10℃前後の日が続いていたのだ。
残雪で白い庭の景色がいきなり残酷な物語の背景に見えてくる。

真っ青な空に真っ白の雪を冠った絵に描いたような富士山。
パニック映画のオープニングはこのような典型的でやたら平和な映像から始まるのが定番ではなかったか。
寒さのせいか緊張のせいか、頭が痺れてきた。
  ズンズンズンズンズンズンズンズンズンズンズンズンズンズン
映画「ジョーズ」の音楽が頭の中で鳴り響きはじめた。

その時、さらにもう一度。 「ガッツン」
「ひゃっ!」と叫んで部屋に飛び込み、それでも巨大サメからは守る事のできた足を座り込んでいつまでもさすっていたのだ。


2012.3.15
追分 めぐみ
 
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