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【 VOL.43】 「例年」の農鳥  
     
 
 

青豆の背比べ
 
「例年」の農鳥

ここにエッセイを書くようになってから、まだ季節は2回しか巡っていないのに「今年は例年と違って」という言葉を何度使いたくなった事だろう。
しかし、考えてみれば今年の冬「例年と違って」湖が全面凍結しそうなほど寒かったが、30年以上前は「例年のように」湖は毎年凍結してたのだ。
花の咲く時期も順番も毎年違うのがあたり前で、同じ月、同じ日なんて事はあり得なく「例年」は「毎年」の平均で、実体はない。

それにしても今年の富士山の雪型、農鳥だ。
確か1月の終わり頃の事だったと思う。
その頃の富士山は「例年より」雪が異常に少なく寒さも相当厳しかった。
そんなある日、農鳥がいきなり現れたのだ。
それは春の雪解けと共にジワジワと現れる優しいラインの農鳥ではなく凍える寒さの中、強風に雪を無理やり剥がされた「険」のある農鳥だった。
二日間位の事か、もしかして一日いっときの事だったかもしれない。
その時は「雪の少ない年にはこんな事もあるのだ」ぐらいに思っただけで深く気に留める事も無く、その後すっかり忘れていた。

「真冬の農鳥」を思い出したのは「春の農鳥」が5月の下旬になっても未だにすっきりと現れないからだ。

2月も末になって、ようやく雪が何度も降り「例年」の冬以上に白くなった富士山は4月、5月と麓では初夏のような暑い日と冬のような冷たい雨の日を繰り返すその度に雪が減ったり増えたりを繰り返していた。
そして、その雪は周囲の雪が随分なくなったのに未だに農鳥の出てくる辺りをじりじりと隠している。
農作業の合図といわれる農鳥が現れないのに、春の遅いここらでもすでに田植えは終わり、早くに作付けの終わった畑ではレタスもホウレン草ももうすぐ収穫できるほどに育っている。
農作業を始める頃に現れるから農鳥なのか、農鳥が現れてから農作業を始めるのが良作に繋がるという経験からつけられた名前なのか。
「農鳥」という名にこめた先人の経験と知恵、私のような新参者で部外者の臆病な予感が当たるはずない。

それにしても毎年現れる姿が見えないとやけに気になる。
もしかしてこのまま鳥の形がはっきり出ないまま雪が溶けてしまいはしないかと今日も富士山のその辺りを何度も確かめてみるのだった。


2012.6.15
追分 めぐみ
 
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